送迎バスの置き去り防止対策を解説!安全装置ガイドラインの内容や活用法は?
近年の保育園・幼稚園バスにおける置き去り事故について、ニュースなどで目にしたことがある方も多いでしょう。バスの置き去り事故を防ぐためには、人数確認に加えて見落とし対策ができるツールの活用などが不可欠です。
そこで今回は、バスでの置き去り事故の要因を詳しく解説したうえで、悲惨な事故を未然に防ぐための有用な対策についてもご紹介します。保育園・幼稚園にお勤めの方や事業主の方はもちろん、保育園・幼稚園に我が子を通わせる保護者にとっても重要な内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
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1. 保育園・幼稚園バスの置き去り事故対策は必須
記憶に新しい置き去り事故の事例として、直近の2つの事故をご紹介します。
2021年7月、福岡県中間市では、保育園の送迎バス内に当時5歳の園児が取り残され、熱中症で死亡した事件がありました。この事件の裁判の主な争点としては、保育園側の安全管理注意義務が挙げられています。母親側の主張では、確認が不十分なままドアを施錠したとして園側の過失が指摘されていました。
また、2022年9月には静岡県の認定こども園において、女児の通園バス置き去り事故が発生しました。同年12月には元園長ら4人が業務上過失致死の疑いで書類送検されています。
どちらのケースにおいても、園児を預かる施設側の管理責任が重要なポイントとなっており、痛ましい事故をこれ以上引き起こさないためにも、施設での対策は急務となっています。
2. 政府の緊急対策「こどものバス送迎・安全徹底プラン」について
度重なる送迎バスの置き去り事故発生を受け、2022年10月、この深刻な問題に対処すべく、政府は緊急対策として「こどものバス送迎・安全徹底プラン」を発表し、こどもの安全を最優先事項として位置づけました。緊急対策は以下のような内容となっています。
緊急対策の概要
- ① 所在確認や安全装置の装備の義務付け
- ② 安全装置の仕様に関するガイドラインの作成
- ③ 安全管理マニュアルの作成
- ④ 早期のこどもの安全対策促進に向けた「こどもの安心・安全対策支援パッケージ」
引用:文部科学省|こどものバス送迎・安全徹底プラン〜バス送迎に当たっての安全管理の徹底に関する緊急対策〜
いずれのポイントも、直近の事故を受け問題となっていた点を基に、バスの乗降時の所在確認や安全装置の導入などを義務付けたものとなっています。施設ごとに政府のガイドラインやマニュアルに準拠した対策を、策定・実践することが重要です。
3. 送迎バスでの園児の置き去り事故が起きる原因
なぜ園児送迎バスでの置き去り事故は発生してしまうのでしょうか。最近の事例から推測される主な原因は、以下の3つです。
- 降車時の人数確認の漏れ
- 降車後の車内点検の漏れ
- 登園後の出欠確認の漏れ
一つずつ解説します。
降車時の車内確認の漏れ
送迎バスではこどもをバスから降ろした際に、運転手や乗務員が車内に残っているこどもがいないか点検し、園では降りたこどもの人数を把握します。
置き去りが発生してしまう要因は様々ですが、乗車時と降車時に人数を把握していなかったり、点呼をしていなかったり、そもそも必須業務として降車時の車内確認を実施していなかったりといったことが挙げられます。
特に外部からの派遣人員などが乗務を担当する場合は、人数の確認漏れが起こりやすく、注意が必要でしょう。
降車後の車内点検の漏れ
園児が降車した後の車内点検も、置き去り事故の防止は不可欠といえます。
幼児・園児はからだが小さく、運転席側からの確認だけでは見落としてしまうことがあります。多くの幼稚園や保育園では降車時に車内点検を行い、バス内の死角の確認を実施していますが、もし降車時の車内点検が漏れていると、置き去り事故に直結してしまうことになります。
登園後の出欠確認の漏れ
保育園や幼稚園では通常、登降園管理システムや出欠確認などで園児の登園状況を確認します。万が一、降車時の点検漏れにより置き去りが発生してしまった場合でも、出欠確認を徹底することで早期に発覚・対処が可能になります。
もし登園後の出欠確認が行われず、保護者へ連絡が取られていなかったとしたら、置き去りの危険に気づかない可能性が高まります。迅速な対応を可能にし、置き去り事故を未然に防ぐためにも、登園時の確認を徹底するのが大切です。
4. 送迎バスの置き去り事故を防止するための対策
保育園や幼稚園の送迎バスでの置き去り事故を防止するための対策として、次のいくつかの方法が挙げられます。
- 乗降時の人数確認の徹底
- 降車後すぐの車内点検の実施
- 欠席連絡がない場合の保護者への確認
- 万が一の事態に備えた訓練の実施
乗降時の人数確認の徹底
乗降時の人数確認は、置き去り事故を迅速に察知するために不可欠です。人数確認といっても、ただ呼びかけるだけでは実効性に欠ける場合もあります。
具体的には、日々の義務である日報に乗降人数を記録する仕組みを作るなど、人数確認を組み込んだ業務プロセスを構築するのが効果的でしょう。これにより早い段階で人数確認の見落としに気づき、車内点検や保護者への通報などの次の段階の対応を迅速に行えます。
降車後すぐの車内点検の実施
園児の降車後に車内点検をすぐに行うことも、重要なポイントです。特に幼稚園バスでは登園から降園までの間バスを使わないことが多く、一度見落としてしまうと長時間の置き去りのリスクが高まります。
そのため、車内点検と清掃を同時に行うことで、より細やかな点検が可能となります。降車後に速やかに車内点検を行えば、置き去り事故のリスク軽減、ひいてはこどもたちの安全確保に繋がるでしょう。
欠席連絡がない場合の保護者への確認
保護者の方へのタイムリーな連絡も、有効な対策の一つになります。保護者側の都合によっては、多忙な日々の中で欠席の連絡を忘れてしまうケースもあるかもしれません。
しかし、バスの中に置き去りにされていたにもかかわらず、園側が「多忙による連絡漏れだろう」という思い込みで確認をしなかったために事故に繋がったというケースもありました。保護者側から欠席の連絡がきていないにも関わらず園児が登園していない場合は、保護者へ必ず連絡を実施するべきです。
万が一の事態に備えた訓練の実施
たとえ万全の対策を講じていたとしても、万が一の可能性はぬぐい切れません。そのため、こどもがクラクションを鳴らす訓練を定期的に実施することが大切です。
「万が一のときはクラクションを鳴らす」をこどもたちにルール化して周知しておくことで、周囲に助けを求められます。また、クラクションを鳴らすには大人でも力が必要なため、こどもの力でも鳴らすことができるように練習させておくことも欠かせません。
5. 2023年4月から安全装置の設置が義務化
2023年4月から、置き去り防止のための安全装置の設置が義務化しました。以下では対象施設の種類をご紹介します。
安全装置義務化の対象施設
- 幼稚園
- 幼稚園型認定こども園
- 特別支援学校
- 幼保連携型認定こども園
- 保育所
- 保育所型認定こども園
参照:文部科学省|こどものバス送迎・安全徹底プラン〜バス送迎に当たっての安全管理の徹底に関する緊急対策〜
なお、設置義務については2023年4月から1年間の経過措置が設けられているため、もし未設置であれば早急に安全装置の情報収集、設置を進める必要があるでしょう。
6. 国土交通省認定の安全装置のガイドライン
国土交通省が認定する安全装置には、以下の種類があります。
安全装置の種類
- 降車時確認式の装置
- 自動検知式の装置
- これらの機能を組み合わせた装置
参照:国土交通省|送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン
また、国土交通省のガイドラインにより、それぞれの装置には最低限の要件が定められています。これらの装置は置き去り事故を防ぐために設計されているため、装置の品質と性能を担保し、信頼性を高める意味でも認定を受けている装置を選ぶことが大切です。
認定を受けている安全装置は、以下のこども家庭庁のウェブサイトで確認できます。
こども家庭庁|送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置リスト
降車時確認式の装置の要件
降車時確認式の装置は、運転手や乗務員がこどもの降車後に確認を実施するよう促す方式の装置です。最低限の要件は以下になっています。
- ① エンジン停止後、運転者等に車内の確認を促す車内向けの警報
- ② 車内を確認し、運転者等が車両後部の装置を操作すると警報が停止
- ③ 確認が一定時間行われない場合、更に、車外向けに警報
運転手がエンジンを停止した後に必ず車内後方の停止ボタンを押さなければ警報が止まらない、という仕組みを要件にしています。
一定時間警報が止まらなかった場合は、車外への発報も要件として盛り込まれているため、万が一警報を解除しなかった場合でもスピーカーなどで第三者に危険を知らせ、二重に防止策としての機能が期待できます。
自動検知式の装置の要件
自動検知式の装置は降車時確認式と異なり、搭載されたセンサーによって車内が自動で確認される装置です。要件は以下の通りになっています。
自動検知式の装置の要件
- ① エンジン停止から一定時間後にセンサーによる車内の検知を開始
- ② 置き去りにされたこどもを検知すると、車外向けに警報
エンジン停止を起点とする、という点では降車時確認式と同様ですが、自動検知式の場合は停止後一定時間が経過すると、センサーが自動で社内確認を実施します。そして動きなどでこどもを検知すると外部にスピーカーや乗務員へのメール通知などで発報し、置き去りを未然に防ぐ仕組みになっています。
あくまで機械によるセンサー確認になりますので、人の手で必ず車内確認を実施して自動検知式の装置は補助的な役割で活用する、という意識は常に持っておく必要があるでしょう。
両装置に共通する要件
降車時確認式と自動検知式、両方に共通する要件もあります。
両装置に共通する要件
- ① 運転者等が車内の確認を怠った場合には、速やかに車内への警報を行うとともに、15分以内に車外への警報を発すること
- ② こども等がいたずらできない位置に警報を停止する装置を設置すること
- ③ 十分な耐久性を有すること(例)-30~65℃への耐温性、耐震性、防水・防塵性等
- ④ 装置が故障・電源喪失した場合には、運転者等に対してアラーム等で故障を通知すること
①については、エンジン停止後15分以内に必ず車外へ警報を発出する仕組みを必須とするものです。
また、②では車両の下部等に設置することは基本的にNGです。必ずこどもの手が届かない、車両の上部に設置するようガイドラインに記載されていますので、取り付けなどの際は注意しましょう。
7. 安全装置の導入で受けられる補助金
前述した通り、政府の「こどものバス送迎・安全徹底プラン」の緊急対策の一つである「こどもの安心・安全対策支援パッケージ」として、ガイドラインに適合した安全装置を導入する場合には、国からの定額補助があります。
安全装置の設置が義務化された施設か・そうでない施設か、また安全装置の使用に関するガイドラインに適合した製品かどうか、などの要件によって補助額に変動があります。
保育園や認定こども園などの装置設置が義務化された施設では17万5000万円、そうでない施設の場合は、ガイドラインに準拠した製品を購入することで、8万8000円の補助金を受け取ることができます。
8. おすすめの安全装置は「メール通知」機能付きのシステム
置き去り防止のための安全装置における大切な要件は、置き去りにされたこどもを検知したときにブザーを発報し、外部に知らせるという機能を満たしていることです。
安全装置は様々な種類がありますが、その中でも特におすすめなのは、危険を検知した際の外部への通報機能が充実したものです。送迎バスの駐車場と保育スペースに距離があるなどの理由で、停車後に送迎バスから大人が離れてしまう場合、ブザータイプの外部通知システムでは置き去りにいち早く気づくことができない危険性があります。
たとえば、メール通知やスマートフォンへの連携の機能を搭載した装置であれば、置き去り発生時の警報を乗務員や運転手のスマートフォン宛にアラートメールを送信できます。通知を受け取れば万が一の場合に送迎バスの近くにいなくても、迅速に事態を把握、対処することが可能です。
9. 「急コール」との連携で電話通知も!見逃しを徹底防止
メール通知の機能が付いた安全装置を導入する場合、通知がくる仕組みを構築することも大切ですが、届いたメールの見逃しを防ぐことも同じくらい重要です。ここでは、緊急性の高いメールの見逃しを防ぐことができるサービスとして、「急コール」を紹介いたします。
「急コール」はワイドテックのクラウドサービスで、特定のメール受信を担当者へ自動で電話通知できるサービスです。
メールの件名、本文を解析し、特定のメールだけを必要なときにタイムリーに自動連絡する当システムですが、先に述べた置き去り防止の安全装置におけるメール通知システムとの連携が可能です。
たとえば置き去り防止安全装置の警報システム要件を満たし、メール通知が遠隔地の担当者に届いた際に、最短15秒以内に電話通知を実施。見落としのリスクを極限まで下げつつ、迅速な二次対応が可能になるのです。
また、「急コール」はクラウドサービスのためサーバーや電話機、専用の機器などの導入が不要で、初期費用を抑えながらすぐにシステムを構築することができます。
安全装置と組み合わせることで、見落としの危険性をカバーしながら理想的な形で置き去り防止の仕組みを実現できるため、業界から注目を集めているサービスです。
10. まとめ
本記事では保育園・幼稚園における置き去り事故防止の重要性から政府のガイドライン、安全装置とメール見逃し防止システム「急コール」についてご紹介しました。
「急コール」を導入することでメールを受信してから最短15秒で登録済みの担当者に自動的に電話通報を行えるため、速やかで正確な対応が期待できます。置き去り防止装置のご導入を検討しており、自動電話通報に興味をお持ちであれば「急コール」の導入をご検討ください。
特定メールの受信を電話で知らせる「急コール」
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